【りんご病(伝染性紅斑)とは?流行状況・症状・注意点を歴史から解説】
- a05m100
- 7月2日
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🟥【はじめに】
最近、保育園や小学校などで**「りんご病(伝染性紅斑)」が流行しています。**一見軽い病気に思えるこの感染症ですが、実は妊婦さんや免疫力の弱い方にとって注意が必要な病気です。
顔が赤くなる特徴的な発疹から「りんご病」と呼ばれていますが、その背後には、100年以上の歴史を持つウイルス感染症が存在しています。
この記事では、2025年の最新の流行状況とあわせて、りんご病の原因・歴史・症状・合併症・感染経路・予防法をやさしく、かつ医学的にもしっかりと解説します。
🟨【1. りんご病とは?】
りんご病は、ヒトパルボウイルスB19(Parvovirus B19)が原因のウイルス性の発疹性疾患です。
主に学童期の子どもに多く見られ、顔の両頬に赤い発疹が出ることから「りんご病」と呼ばれます。
潜伏期間は10〜20日程度で、発疹が出るころには感染力が弱くなるという特徴があります。
現時点でワクチンや特効薬は存在せず、自然経過で治癒するのが基本です。
🟦【2. りんご病の歴史】
19世紀、ヨーロッパで原因不明の子どもの発疹病として報告され始めました。
既知の病気(麻疹、猩紅熱、風疹、デュークス病)に続いて**「第5病(Fifth Disease)」**と呼ばれるようになりました。
1983年、イギリスの研究者によってヒトパルボウイルスB19とこの病気の関係が明らかにされました。
1990年代以降は、抗体検査やPCRによって正確な診断が可能になり、周産期医療や免疫疾患領域での注意点も整理されてきました。
🟩【3. 症状と経過】
🔸子どもの場合
初期症状は風邪のようなもの(微熱、だるさ、軽い咳など)
その後、**顔の両頬に左右対称の紅斑(こうはん)**が現れます
数日以内に腕や太ももにレース状の発疹が広がることもあります
通常は数日〜1週間で自然に改善します
🔸大人の場合
特徴的な発疹が出ないこともあり、関節痛が主症状になるケースがあります
特に手首、肘、膝、足首などに左右対称の関節痛が出現
関節リウマチと間違われることもあり注意が必要
関節症状は数週間〜数ヶ月間続くこともあります
🟥【4. 注意すべき人・合併症】
⚠ 妊婦さん
妊娠中の感染により、胎児がウイルスに感染する可能性があります
特に**妊娠初期〜中期(20週未満)**の感染では、
胎児水腫(たいじすいしゅ):胎児の体内に水分がたまり、むくむ状態
胎児死亡や流産が起こる可能性があり、超音波検査による定期的な観察と周産期専門医の管理が必要です
⚠ 免疫力の低下している方
感染するとウイルスの排除が難しくなり、**持続感染や重度の貧血(溶血性貧血)**を起こすことがあります
特に以下の方は要注意:
鎌状赤血球症や慢性貧血のある方
がん治療や免疫抑制剤を使用している方
🟦【5. 感染経路と予防策】
主な感染経路は飛沫感染と接触感染
咳やくしゃみ、手指を介してうつります
発疹が出るころには感染力が大きく低下しているため、発疹そのものよりも前段階の風邪様症状の時期が感染リスクのピーク
🔄 予防法
手洗い・マスク着用を基本とした日常的な感染対策
妊婦さんや免疫抑制中の方は、流行時期の接触を可能な限り回避することが推奨されます
📈【6. 2025年現在の流行状況】
2025年春以降、全国で伝染性紅斑の報告数が増加中です。
NHK感染症情報ダッシュボード(2025年6月24日)によると、特に静岡市・栃木県・長野県では「感染症警報」レベルで注意が呼びかけられています
例年通り、**春〜初夏(4〜6月)**にピークを迎える傾向あり
📝【7. よくある質問】
Q. 登園・登校はいつからできる?
→ 発疹が出る頃には感染力が弱いため、発熱や倦怠感がなく、本人の体調が良ければ登園・登校可能とされます(地域や園・学校によって判断が異なる場合も)
Q. 兄弟にうつる?
→ 潜伏期間中(無症状)の段階でも感染することがあり、家庭内感染のリスクはあります。手洗いとタオルの共有を避けるなどの配慮が有効です。
📚【参考文献】
厚生労働省「伝染性紅斑」
国立感染症研究所「伝染性紅斑とは」
NHK感染症情報ダッシュボード(2025年6月24日更新)
Lamont RF, et al. BJOG, 2011;118(2):175–186
de Jong EP, et al. J Clin Virol, 2006;36(1):1–7
CDC Health Alert, 2024
SMFM Update on Parvovirus B19, 2024
🟩【まとめ】
「りんご病=軽い病気」と思われがちですが、妊婦さんや持病のある方には注意が必要な感染症です。
感染力が落ちてから発疹が出るという特性は、見た目だけでは判断できない病気であることを示しています。家庭・教育・医療の場で「知っておくこと」が、まわりの人の健康を守る大きな力になります。
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